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WARABI - MOTI

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オススメの小説。「空の境界」

「空の境界」は上下巻で完結している物語。

やっぱり最初に読んでいて感じるのはその「世界観の広さ」。

実際に「見る」ことは出来ないが、何処かその広さを「感じさせる」その文章はやはりすごいなぁと思う。

この作品も「奈須さん(月姫やFateと同じ)世界」で話が流れていく。

その象徴としての「魔術」だったり「魔法」だったり、それを使う人(魔術師)だったりが存在している。

那須さんの作品ってどうも、ある種ファンタジーというジャンルに成りきれてない部分が強い感じで・・・ってコレ批判じゃないですよ。


よく「SFならSFで突っ走ってやる!」みたいな風に、極端に魔法を世界観に取り込んでいるもの(世界そのものを違う存在として描く作品 = フィクション)ってある。

それはそれで、「王道の~」としてすごく面白い作品になるし、自分もそういう「フィクション」は大好きだ。

けれど、空の境界に始まる奈須世界、つまり「那須さんの創りあげるフィクション」って、絶対に有り得ないと理解できるモノと、今自分たちが生きているこの現実世界が交じり合っている具合が他とは少し違い、どこか不思議な現実味を帯びてるように感じられる。

まぁ、「魔術」というものが世界に存在しているという所で、実際には現実とは大幅にずれてるんですがね。

でもその「現実と非現実の混ざり具合」、つまり「世界観の制約」の比率という点で、読み手はある種の共感のようなものが生まれ、この作品の面白さが引き出されているんじゃないかと。

簡単に言うと、普通のファンタジー小説の世界が「非現実の上に現実的な風味が乗っかっている」とすれば、空の境界はそれの真逆、「普通の日常的な現実の上に非現実という存在が寄りかかり接している」と言えると思う。

だから、というのも変かもしれないが、ファンタジーとSFとホラーとも似つかない、それぞれが合わさった「伝綺」というジャンルが出来上がったのかもしれない。


それはさておき、月姫をやったことのある人なら分かるのだが、空の境界の主人公の名前である「式」と月姫の主人公である「志貴」、この二つは読み方が両方「シキ」。

遠野志貴は男だし、両義式は女という設定。

当然、性別も違う、性格も違う、言葉遣いも違う。

なのに自分には、どうしても二人が重なって見えるときがあってならない

理由はよく分からないけど、恐らく「死を視ることの出来る眼を持つ」という共通点とともに、「二人とも何かを心に背負っている」というのがその大きなところじゃないかなと思っている。

この二人はきっと、那須さんに大きな想い背負わさせられてるなぁ、とか。

実際にいうと、那須さんは先に両義式をつくり、そのおとこ版のようなカタチで遠野志貴を造ったらしいが。

あと、自分が思ったこの作品のおもしろいところの一つには、その時間の流れがあるかと。

一話一話がその時間軸をバラバラにして収録されてるのもあるが、読んでいて話の一つ一つが独立しているように感じる。当然、実際はしていのだが・・・言葉では表せない不思議さが有る。(オイ)

でもこの作品、当初はネット上での公開だったらしく、那須さんは期間を置いて各話を書いていたそうで、それなら雰囲気が一つ一つ独立しているのも頷けるかなぁとか思ったり。

そしてキャラクターたちの衝撃的なまでの魅力にも驚かされるコト請け合い。

主人公の式さんはもちろんのこと。久しぶりに女の子を純粋に「カッコいい」と思った。
不器用だけど、芯は強く考えを曲げられない男の様な彼女。
・・・まぁ色々彼女には秘密があるんですがね。


その他の登場キャラたちにもめろめろ♪

特に蒼崎橙子さんがお気に入りのキャラだったり。

先生のお姉さんということで、多少は曲者だと思っていましたが、あんなに怖さと美しさを秘めた人は橙子さん以外ありえんでしょう・・・。
眼鏡の装着によって性格が逆転するのもまた愛嬌。

むしろ青子先生狂の自分としては、彼女にゲスト出演して欲しかった所存でありますが・・・。
それで橙子さんと姉妹対決っとかね。(妄想野郎)


ストーリーとしては、無論全て好きなのだが、少し後半(6、7話)の盛り上がりに欠けるかな~・・・と。

いや、盛り上がらないというのはウソ。
盛り上がるが、その前の5話が更に盛り上がっていて・・・。

実質ラスボスっぽいの倒すわけですし、何より橙子さんの怒りの鉄拳には燃えないはずありませんて。
かっこいいよぉ\(~・)/~♪

個人的には3話の「痛覚残留」も好きだったりする。浅上藤乃さんの悲しい過去と叶わぬ恋に心打たれたり。(彼女は恐ろしいけど・・・)

あと、何回か読み返すことで初めは分からなかったことが少し理解できるようになると思う。
那須さんの文章難しいし説明多いし。

二回目は年代順に読んでみるというのも一つの楽しみかと思う。


世界観の繋がっている作品が多い、那須さんの作品。

空の境界を読めば、きっと他の作品も読みたくなることでしょう!



「空の境界 the Garden of sinners」  

 出版社:講談社 


以上♪





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